2024/08/29

適応ノッチフィルタの実装

適応ノッチフィルタの実装を読む (github.io)

適応ノッチフィルタの実装について調べました。適応ノッチフィルタはサイン波にノイズが加わった信号から、サイン波だけを消すときに使えます。ただしノイズの種類によってはうまく動かないこともあります。

今回調べた適応ノッチフィルタは内部で位相差のある 2 つの信号を作って振幅変調 (AM) をかけています。入力がサイン波であればカットオフ周波数の周りでの位相差によって AM 信号の直流成分の符号が変わります。この直流の符号の向きが入力のサイン波の周波数へと向かうようにする、というのが適応の仕組みです。直流成分の符号は位相差を φ とすると sgn(-cos(φ)) で計算できます。 sgn は符号関数です。

図は Ishibashi らによる “DSP Implementation of Adaptive Notch Filerts With Overflow Avoidance in Fixed-Point Arithmetic” で紹介されていた CPZ-ANF という名前の適応ノッチフィルタの、内部の 2 つの信号の位相差を示しています。 "Cutoff" の周りで位相差が -π/2 をまたぐので、位相差が -3π/2 を上回る範囲では適応がうまくいきます。位相差が -3π/2 を下回るような高い周波数では適応は失敗しがちです。

2024/08/26

より手軽な LFO のテンポシンク

より手軽な LFO のテンポシンクを読む (github.io)

以前の LFO のテンポシンクよりも手軽な方法を思いついたので試しました。 EMA フィルタによる同期と、蔵本モデルによる同期を紹介しています。以前の方法は状態遷移が煩雑でしたが、今回の方法は状態遷移が不要です。 DAW 上で動くプラグインの LFO であれば、同期先の周波数と位相がどちらも分かっているので EMA フィルタによる同期が適しています。

画像は逆走を防いだ EMA フィルタによる同期の例です。

2024/08/15

Integer Sample Tuning Table / 整数サンプル調律の表

Take a look at integer sample tuning table (github.io)

This is a tuning table used in GlitchSprinkler. They are named as `Discrete` tunings in GlitchSprinkler plugin. Web synth version is always using a tuning that `Min period` in the table parameter is 2 samples.

The errors of pitches are quite bad at higher frequencies, even around 1000 Hz.

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整数サンプル調律の表を見る (github.io)

この調律は GlitchSprinkler で使われているものです。プラグイン版では Tuning の `Discrete` のいずれかを選べば対応する調律が使えます。 Web シンセ版は表の `Min period` を 2 サンプルに設定したときの調律に固定されています。

ピッチの誤差は高い周波数で悪くなり、 1000 Hz あたりでもかなりずれています。

2024/08/11

Release of GlitchSprinkler Plugin / GlitchSprinkler のプラグイン版を公開

GlitchSprinkler Manual (github.io)

GlitchSprinkler plugin version is ready. Download link is available on the manual page linked above.

GlitchSprinkler is a synthesizer specialized to play fast arpeggio. It is mostly the same as the web synth version, but a resonant low-pass filter is added. It has some character that comes from integer sample period and a bit unusual note stealing.

By making the period an integer sample, it is possible to make it appear as though aliasing is not present to the human ear. This method is faster to calculate than proper anti-aliasing, but has a side effect that makes higher notes to be out of tune. It also can't work well with pitch bend.

The note stealing affects rhythm. A note changes or stops only when the oscillator completes the current cycle. This jitters the rhythm especially when the tempo is fast, or the note is low.

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GlitchSprinker のマニュアル (github.io)

GlitchSprinkler のプラグイン版を公開しました。ダウンロードは上にリンクしたマニュアルページからできます。

GlitchSprinkler は速いアルペジオに特化したシンセサイザです。 Web シンセ版とほとんど同じですが、ローパスフィルタが追加されています。音については、周期が必ず整数サンプルになることと、変なノートスティーリングによる独特の癖があります。

周期を整数サンプルにすることにより、人間の耳にはエイリアシングが聞き取れないようにごまかすことができます。この方法はまともなアンチエイリアシングに比べると計算が速いのですが、高い音程ほどピッチがずれるという副作用があります。また、ピッチベンドとの相性も悪いです。

ノートスティーリングはリズムに影響を与えています。ノートの変更や停止は、オシレーターが現在のサイクルを完了したときにのみ行われます。これにより、テンポが速い場合やノートが低い場合に特にリズムが揺れます。

2024/08/06

Dark Color Scheme for Uhhyou Web Synthesizers / Uhhyou Web Synthesizers のダークモード

Dark color scheme is added for Uhhyou Web Synthesizers.

This dark color scheme is just an invert of light color scheme. It's not 100% invert, but 87.4% (≈ 1 - (0x20 / 0xff)) to make background color to be #202020.

Currently, the color scheme only respects the setting provided by operating system. The pages are using `prefers-color-scheme`, however there's no easy way to change it within web pages. I was hoping that calling something like `window.setColorScheme("dark")` to change the color scheme, but it seems like there's no way to toggle `prefers-color-scheme` from JavaScript.

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ダークモードを Uhhyou Web Synthesizers に追加しました。

このダークモードの配色はライトモードの単なる反転です。ただし、背景色を #202020 にするために 100% ではなく 87.4% (≈ 1 - (0x20 / 0xff)) の反転になっています。

配色は OS の設定によってのみ変更できます。 `prefers-color-scheme` を使っているのですが、このメディア特性 (media feature) をページ内から変更する方法が無いようです。今後、 `window.setColorScheme("dark")` のような形で簡単に変更できるようになって欲しいところです。